書籍「つむじ風食堂と僕」を読んで考えたこと

このページは、宮本研究室の3年生が「つむじ風食堂と僕」吉田篤弘著を読んで考えたことを文章にしたものを掲載しています。

2021年度  ◎◎◎ごとに執筆者が異なります。

◎◎◎ 私が、『つむじ風食堂と僕』(吉田篤弘,2018)を読み感じたことは他人の考えを聴くことにより、ある物事について自身と異なる「価値観」に基づいた考えを知る、ということです。

 この本では主人公のリツ君が、他人の話や言葉を聴き(或は、聞き)それらを知ることにより、自身と完全には同じでない各人の「価値観」に触れます。例えば本文中に大人の人たちが言ったことに対して、「どれも、「そうだなぁ」と思うし、どれも「そうかなぁ」と思う」(吉田,2018,p.18)とありました。さらに、「つまり、感じることには差がある。同じ体験をしても、全員が同じように感じるとは限らない」(吉田,2018,p.97-98)ともあります。これらのことから、リツ君は他人の考えを聴くことにより、自身とは異なる「価値観」に触れ、一つの物事に対しての異なる考え方があることを知ったと分かります。

  私も他人の話を聴き、自身にはない「価値観」による新しい考え方を得たと感じたことがあります。それは、大学の「メディア論」という講義で学んだ時のことです。この講義は簡単に説明すると、ある「物」が作られた時それがどのような影響を人に与えるかを考える講義でした。私は、この講義を聴き学ぶことによって、ある「物」の存在が人や人の行動にどのような影響を及ぼすのか、ということに価値を見出す考え方を知りました。

 この様に、他人の考えなどを知ることにより、それまで自身にはなかった「価値観」に基づく考え方が得られます。その為、主人公のように言葉を知ることや、他人の考えに対して共感する(または、共感しない)にしても、他人の考えを知ることは重要だと感じました。

(引用文献) 吉田篤弘 著,『つむじ風食堂と僕』,株式会社筑摩書房(ちくまプリマ―新書200),2018  (終)

◎◎◎  今回つむじ風食堂と僕という本を読んでみました。この物語は十二才の少し大人びた少年リツ君が一人で隣町の食堂に行くようになり、そこで「仕事は何ですか」と食堂に来る人に訊くようになります。その質問に対して色々な大人たちが、色々な職業を紹介してくれます。そこでリツ君にはどんな仕事が合うかを探していくようになります。

  私の印象に残った言葉は役割分担でした。この物語の中では「今の世の中ではそれぞれが役割を決めて分担する、それが人間の考え出した最大の発明」と言っていました。まさにその通りの事を私が感じたのは飲食店のバイトをしていたときでした。そこでは商品を作る人がいて、後ろで材料を切る人がいて、ホールでお客様の対応をする人がいて、それぞれで指揮して管理する人などがいました。それぞれに役割があり一人一人が動くことによって店が成り立っていると感じました。この仕組みはどこでも同じだと思いますし、だから自分の役割を早く決めたいとも思えました。リツ君は色々な人の意見を聞き、あぁこんな職業にもなれるのかと感心している場面もありました。私はまだこれから進む道をはっきりとは決められてはいません。リツ君のように他人と関わってみることで何か新しく見えるものがあるのではないかと考えられるようになりました。これからはリツ君のように食堂で訊くことはできなくても私なりに精一杯頑張りたいと思いました。   (終)

◎◎◎  私は「つむじ風食堂と僕」を読んで、むかしの自分について振り返させられました。そもそもこの「むかし」というのは人それぞれです。私にとって「むかし」とは生まれてから中学生までです。しかし、これは現在の私にとっての「むかし」であり、歳を重ねるに連れ「むかし」の幅は大きく広がっていくでしょう。この話の主人公であるリツ君は「むかし」はやり直しがきかないと言っていましたが、ほかに登場してくる大人はやり直しができると言っていました。私はリツ君の表現に深く共感していて、人間が変えられるものは未来しかないと思っています。何をしようが「むかし」に戻ることや、過去を変えることはできません。やり直したいという気持ちがあるのならば、その気持ちを未来を変える力にするべきである、と感じました。  (終)

◎◎◎  「定点観測」という単語に筆者の思いが込められていると感じた本であった。これは定点を自身とし、毎日つくってゆく「むかし」を観測してゆくことだと私は考えた。さまざまな職業の大人たちがリツ君に仕事との付き合い方を意見している場面があるが、将来を考え行動した経験を語った大人達は、皆「むかし」を意識していると気付いた。同時に、彼らは無意識に「定点観測」をし、自身の仕事や他の職業の素晴らしいところを見つけていた。このことから、過去の自分と真剣に向き合うことで、将来が不安な今の私にも就職の見方が変わり、やるべき事が見えてくるのではないかと感じた。 「定点観測」、つまり将来について考えることを続けてゆくことの大切さをこの本から会得した。これからは意識して私の「むかし」をつくってゆこうと思った。 (終)

◎◎◎ 短編小説は久しぶりに読んだのですが楽しく読めました。物語の僕の解釈は、将来が心配な小学生の男の子に仕事をしている大人たちが自分たちの仕事に対する思いなどを男の子に教えて男の子がどう思ったかという物語で、自分たちは本の登場人物について何も知らないので、その少年の近くに座った地球がどのようなところか知ろうとしている宇宙人と同じ目線で聞いているのだと思いました。このように考えさせてくれる文章は自分の成長を促しているようでありがたいです。ですが、僕は文章能力が壊滅的なのでこれから書く自分の考えが伝わるかどうか怪しいです。

 P.33の肉屋がアンカーというのは営業全般に言えると思いました。たくさんの人が関わって出来たものを売るというのは想像しただけで責任が重大な感じがします。

 絵描きの話しを読んで思ったのは、個人事業主みたいな自分の判断が最終決定につながる仕事というのは保守的な考えの自分から、責任問題や損失を考えた時のプレッシャーが怖いほどに強く感じます。逆に利益や可能性を考えると宝くじのように一発当てる野望や、自分のやりたいように仕事をできるというのはとても興味をそそられることなので、とてもやりがいのある仕事であることなのだと思います。

 この本を読んでまず感じたことは話がNHKの番組に出てきそうな印象を感じました。大人が読むより自分たち就職する前の年代が仕事とはこういうものだと学習するための教科書のようです。私はこの小説を読んで結論として仕事を選ぶにあたって具体的な理由は必須ではないのだと思いました。必須ではないというのは人によっては理由が必要な人もいると思いますが、会社に入ってから好きになった。気づいたら長い間務めていた。などがあり得ると感じたからです。実際私たちの高校や大学の入学理由は、この学校に必ず入りたかったという人以外に、自分の偏差値で行けるところがこの位だから。第一志望に落ちてしまったから。などの理由を持つ人がいると思います。さらに、小学校、中学校に至っては本人の意思とは無関係に入れられています。しかし、卒業までほとんどの人が通い続けます。これは嫌なのに通うわけではなく、好きで通っているのです。後からできる理由が、あっても言いのだと、小説を読み自分の過去と照らし合わせながら感じました。仕事と学校は一緒ではないと思いますが、仕事を体験したことがない自分はそう感じました。 (終)

 2020年度

◎◎◎ さまざまな大人達と出会い、自分の生き方や将来について考えるリツ君の心情は私自身と重なる部分がありました。私もいよいよ大学3年生になり、就職や進学といった将来の自分について真剣に考えなければならない時期を迎えました。どちらにするかまだ決まってはいませんが、就職するのであればエントリーシートを書いて面接に備えること、進学するのであれば必要に応じて勉強しなければならないことがあります。どちらもやらなければならないことがたくさんある中で、思い通りの結果が得られるかと常に不安になることでしょう。そのような日々を過ごすことは正直苦痛であり、考えたくないと思うこともありますが、時間は止まってはくれません。そういった部分が人生においては大変なのだと考えるリツ君を自分と重ねながら読んでいました。このあとリツ君にはどのような心境の変化が起こるのか、続きが気になりました。

◎◎◎   私がつむじ風食堂と僕を読んで感じたことは、「むかし」の基準が人によってまちまちだということです。私にとっての「むかし」は小学生の頃です。また、主人公のリツ君が、自分の「むかし」と世界の「むかし」の共通点として、「やり直しがきかない」と表現していたのが、実際に自分の経験から、とても共感できる所でした。

◎◎◎  「つむじ風食堂と僕」という本では、「むかし」とはやり直しができると言う者と、できないと言う者が挙げられています。そして、著者はやり直しができないと考えています。 私は著者と同じ考えで、やり直しができないと思います。なぜなら、どうしようもないものや、もう二度と変えられないものを「むかし」と私は思っているからです。この本に登場 した「むかし」はやり直しができると語っている大人に、一体どうしたらやり直しができる のか教えて頂きたいほどです。  

 しかし、私は「むかし」に戻るということはできると思っています。それは祖父の家や通っていた学校などに行くと「むかし」に戻ったように思えるからです。つまり、「むかし」を再現することは可能で、それを見たり感じたりはできると考えるがやはりやり直しはできるものではないと私は思います。

◎◎◎  今回つむじ風食堂と僕を読み主人公「リツ君」の心の描写に着目していきたいと思います。リツ君は「むかし」と「将来」について考え、子供と扱われるのが嫌で大人な振る舞いをする性格です。しかし、リツ君はまだ12歳でわからない言葉が多く、子供らしさが多くみられます。

 第一章では、リツ君の父について、つむじ風食堂でどのようなことをしているのか一連の流れが描写されています。つむじ風食堂で決まってすることは大人に「仕事は何ですか。」、と聞いています。そこでリツ君は「将来」自分がどうするか考えています。

 次に、第2章ではリツ君が「宇宙人」という言葉に置き換えて話が進んでいきます。「子供」は「大人」の話の難しい単語は分からないので、そこをあえて「宇宙人」として表現しているのが、私はこの表現がとても素晴らしいと思いました。リツ君はつむじ風食堂に1週間に2回通って大人に仕事の話を聞き、いろいろなことを学びます。私が印象に残ったのは、好きな劇団に所属していた人がそれだけでは食べていけないので、配達業を掛け持ちしていたが、配達業も劇団も「思い」を「お届け」することには変わらないことに気づき配達業を選んだ話がとても感慨深いと思いました。他にいろいろな職業に対する思想があって私自身ためになりました。

 最後に第三章では、いつも通りつむじ風食堂で話を聞いていると、「女性」からリツ君はお父さんに仕事のことを聞かないのか尋ねられます。リツ君は自分の父親なので知っていると答えるがその「女性」は怖い顔をしてリツ君が嘘をついているのを見透かしているようでした。そして、リツ君は自分が一番知っているはずの父親から彼の仕事に対する考えを聞きました。リツ君は初めて自分の父親の仕事に対する考えを聞き、人それぞれ仕事に対する考えがあることを学びました。

 私はこの本から多くの職業に対する様々な考え方を感じ取り、本当になりたい自分になれるかどうかを考えさせられました。

◎◎◎ 「つむじ風食堂と僕」を読んで私が印象に残っている場面は、リツ君が食堂に来ている人に仕事について聞いているところです。その中でも特に、役者を目指していた方が経済的理由により配達員の仕事をしていたというエピソードが印象的でした。

 その理由として、私は仕事についてたまに考えることがあり、先の見えない自分の将来を不安に思うことがあるからです。仕事を続けることができるか、周りや環境とうまくやっていけるかなど心配に思っていました。

 しかし、この本から私は、全員が自分の思い通りの仕事に就けるわけではないが、与えられた仕事をこなすことによって、知りえなかった思いや喜び、知識に気づくことができると思えました。そして、沢山の失敗をすることで学び、最終的には自分の仕事に誇りを持てているということを凄いと感じました。

 これから社会人として働くときには自分の仕事に誇りを持てるように頑張ろうと思います。

◎◎◎  「つむじ風食堂と僕」は、将来や仕事、自分がしたいこととは何かを考えさせられる内容だった。将来、自分がやりたい仕事をしているかわからない。やりたかったことではない仕事をしているかもしれないが、この世のどんな仕事にも意味があり、働いているすべての人が誰かの役に立っていると改めて感じた。給料や企業のブランドではなく自分が本当にやりたいと思えるかどうか、自分の目的を達成できる仕事が大切で、そのような仕事がしたいと考えた。  

◎◎◎ 「つむじ食堂と僕」は、12歳のリツという少年の物語である。その中で初めに少年が「むかし」について考える。そしてその少年はつむじ風食堂という名もなき食堂で様々な大人からそれぞれの仕事について話を聞き、まだ幼い少年は将来について考える。そこからこの物語は始まっていく。

 上記の内容は物語の始まりに過ぎないが、その中で私は、まだ12年間という短い人生の中で少年の「むかし」に対する考え方の中に人生はやり直すことができないという言葉があり、確かに過去を変えることはできないと私もそう思う。その中で今の自分の生活や行動を振り返り、どのように将来を自分の中で描き、目標に向かって実行していくかということを大学生ながらこの小説を通して改めて考えさせられ、もう一度自分の人生見つめ直そうと思った。

               以上   2020年度