Version 04/10/1995
佐賀大学理工学部超電導応用研究グループ
電気学会論文誌B, Vol, 116-B, No.1, pp. 126 (1996.1) 掲載
本学では、電子工学科電子応用工学講座の一部と電気工学科電気機器工学講座の
一部が協力して超電導応用研究グループを構成しています。グループの
メンバー
は、教授(牟田一彌)、
助教授(星野勉)、
技官(築地浩)、
客員研究員1名、大学院
生2名、卒研生3名がおり、超電導技術の電力機器応用
に関する研究に携わっています。
研究室の紹介や研究状況については、WWWサーバー、
プレプリントや\LaTeX のスタイルファイル
などは、ftpサーバーで公開してい
ます。また、低温工学・超電導工学関係者のための
メーリングリストを運営しています。
1. 超電導発電機用励磁装置
超電導発電関連機器・材料技術研究組合において開発中のものと違って、電機子
や励磁器まで超電導化したシステムを研究しています。1988年に全超電導発電機
の発電実験に成功して、研究の主眼は、励磁装置に移っています。すなわち、全
超電導発電機の励磁に用いたフラックスポンプの特性把握に勤めるとともに、整
流型の励磁装置の検討を行っています。この励磁装置は、伝導冷却と組み合わせ
て、使い勝手の良いマグネットシステムを構成できる可能性を秘めています。
2. 超電導電動機
1987年から、1号機(30 kW回転電機子型)の試作を開始し、1994年に特性試験を終
了しました。残念ながら手作りの4極鞍型コイルの問題点から、15 kVA級で300
rpmまでの無不可回転試験までにとどまりました。電機子が空心であるため、同
期リアクタンスが小さく、電流型インバータによる駆動が不可欠であることが
判明しました。この結果を踏まえ、1991年から、2号機(30 kW回転界磁型)の製作
を開始し、1995年に冷却試験を開始しています。
超電導電動機1号機の実験風景
3. 超電導限流器
他の超電導機器と異なり、超電導状態から常電導状態への転移を積極的に利用
して、電力系統の過電流を抑制する装置です。現在は、低圧配電系統用限流器
の動作試験を行っており、運転条件を明らかにし、開発指針を示すことを目標
にしています。サイクル通電試験装置を製作中で、実際には、プログラムと格
闘中です。
4. 超電導スイッチを用いた整流回路
1992年12月から3ヵ月間滞在したVysostky博士によって導入された超電導スイッ
チによって、50 Hzで50 A, 100 Hzで25 Aの電流の繰返しスイッチングが可能で
あることが示されました。スイッチング損失の低減を試み、素子の改良を行って
います。また、超電導変圧器と組み合わせて、コンバータの動作試験も行ってい
ます。
5. テープ線材の交流損失測定
Nb3Sn超電導テープ線材用に開発した交流損失測定装置を用いて、酸化物超電
導テープ線材の交流損失を測定しています。その結果から、送電ケーブルを構成
することの適性を評価し、損失レベルは、Nb3Snの10倍程度であることと、臨
界電流が小さく、直流送電には使えても、交流送電ケーブルを構成する性能は持
たないことを示しました。今後、いっそうの線材の性能向上が望まれるところで
す。
6. 超高速電動機
超電導を応用するのではなく、極低温を作り出すのに必要なヘリウム液化機に使
うための超高速電動機の研究も行っています。堅牢で軸受間距離を短くできる、
誘導子形同期電動機を試作し、35,000 rpm までの無負荷特性を測定しています。
理論的考察との突合せ、軸受などの改良によって20 kW, 150,000 rpmを目指して
います。
7. ファジィ理論の適用研究
ファジィ理論をいろいろな対象に応用する研究で、ファジィシミュレータを開発
して、ファジィ制御器の設計に用いたり、制御パラメータと制御性能の関係を明
らかにしました。列車走行パターン教示システムへ適用して、制御系が外乱に強
いことも示しました。現在は、乾海苔の画像処理にファジィ理論などを用いて、
等級鑑別自動化のための特徴抽出研究を行っています。これらはいずれ、超電導
電力機器の制御や状況把握に有効な手段となるものと考えています。
最後に、日頃、当研究グループの活動に御援助・御協力頂いている諸研究機関、
企業にはこの紙面を借りて心より御礼申し上げる次第です。
10月1日から京都大学教授、佐賀大学に併任。Rerurn
今年は、所属学生が大学院・学部とも学科の事情によって通常
の1/3に少なくなっています。 Rerurn